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    婚活パーティーが非効率的なワケ

    2013.12.21 Saturday

    この時期はクリスマスやお正月が近いこともあってか、忘年会を兼ねての婚活パーティーがよく盛り上がっているのではないかと思います。もう何年も前のことですが、私もこの手のものに参加してクリぼっち(クリスマスひとりぼっち)を回避しようと必死になっていた経験があります。

    男女100人ずつ参加もカップル成立実質ゼロ

    婚活パーティーといえば先日、JR東日本の主催により秋田新幹線で合コンが行われました。結果は男女ほぼ100人ずつが参加したにもかかわらずカップル成立は1組、収率は1 %です。それも冷やかしに来たようなマスコミ関係者ですから、実質収率はゼロです。一体何人の人がこんな馬鹿馬鹿しい企画のために貴重なお金と時間を無駄にしたのでしょうか?

    私が何年か前に参加した合コンはさすがにこれよりマシでしたが、それでも二次会を含めて収率8 %程度しかなく、その8 %に入れなかったので金返せと言いたいぐらいです。

    なぜ巷で行われる婚活パーティーはこれほどまでに非効率的で無駄が多いのでしょうか。それは主催者が「平衡」を理解していないところにあります。平衡をうまく利用すれば定量的に(ほぼ全員が)カップル成立することも夢ではありません。

    平衡とは

    平衡という単語を辞書で引いてみると、「釣り合いとれていること」という意味が出てきます。一体何の釣り合いがとれているのでしょうか。

    皆さんはおそらく男女の人数や年齢層のことだと思ったのではないでしょうか。それらは終状態を決める上でもちろん重要な要因ですが、それだけでは効率的にカップルが成立しないのです。では何が重要かというと、それは速度論的な観点です。会場では男女が接近して対になるという動きがある速度で起こっていて、逆の過程として再び解離することも起こっています。時間が経つと両者の速度が同じになり、流動的であるにもかかわらず会場内には常に準カップルとカップルとぼっちが一定の比率でずっと存在し続けることになります。この状態を平衡といいます。

    合コンの平衡はぼっち側に偏っている

    準カップルやカップルになると二人で一人のように行動するため、会場内の「行動の主体」は減少します。これは系内の乱雑さ(エントロピー)を減少させることになるため、神の見えざる手によって本質的にぼっちが多数派になるように運命づけられているのです。この傾向は参加者の移動が活発なアツい合コンほど顕著で、新幹線合コンは5分毎のローテーションをしていたので悲惨な結果はこれが主要因ではないかと考えられます。自由移動でも、参加者から見ると必死に相手を探しまくっているのに出会えないのですからこれほど嫌な話はありません。

    カップル成立の障壁と律速段階



    この図は理系の方なら似たようなものをどこかで見たことがあるかもしれません。ぼっちの状態からカップルが成立するまでの不安定度をプロットするとこのようになります。不安定度をどう定義するかというとかなり難しいのですが、「気まずさ」と仮定するとわかりやすいかもしれません。

    会場でカップルが成立する過程はいくつかの段階に分けることができます。最初に起こるのが出会いで、これは会場内の人口密度が高いほど出会いの確率が増えて速くなります。次に、出会った後に会話して親しくならなければなりません。この障壁は結構高く、それ自体が何段階かに分かれているぐらいです。化学反応ではダブルピークになっている場合が多いのでここでもダブルピークとしました。そして、準カップルがカップルと成り得るには、くっついた状態のままもう一山越えて安定状態に落ち着く必要があります。この最後の段階でまさに恋に「落ちる」わけです。

    最初の山を越えるのは初対面の相手と親しくなるということであり、この部分は重要な律速段階です。そしてもう一つの山も超えなければならず、さもなければ最初の解離状態に戻ってしまいかねません。山を越えられるかどうかは確率論であり、5分ローテーションが短すぎるのは誰の目にも明らかです。

    カップル成立効率を上げるには

    前述した非効率性の原因から、婚活パーティーの効率化の要は次の4点に集約されます。

    (1) 初期状態の最適化
    私が参加した合コンは参加者がてんでバラバラで、老若も喫煙も全部一緒くたでした。このような著しく不均質な状態は効率を悪化させますので、あえて不釣合による安定化を狙っているのでなければできるだけ均質にすべきです。

    (2) 人口密度の最適化
    密度が高ければ出会う確率が上がると述べましたが、引力が働くためこれは律速ではないと考えられます。むしろ過密すぎるとアツくなって効率が低下するので、薄いぐらいが丁度良いと考えられます。薄い状態で自由に移動できるようにすべきでしょう。

    (3) 活性化障壁を下げる第三者の存在
    接近時の気まずさを第三者の存在により幾ばくか緩和すれば、活性化障壁を下げて時間効率を改善できます。第三者はカウンセラーの類でも占い師でもいいでしょう。それほど多くの人数は必要ありませんが、多いほうが速度は上がります。それによって強制ローテーションや無理に動きまわる必要が無くなると会場をクールに保てるという副次的な効果もあります。

    (4) 二相化による平衡状態の最適化
    平衡はぼっちとカップルが常に一定比率になるように働くため、成立したカップルが系内から出て行くと残りのメンバーでまた一定比率に落ち着きます。これを繰り返すうちに最終的にはほぼ全ての参加者がカップルになり、最後まで残ったメンバーさえなし崩し的にくっつかざるを得なくなるかもしれません。また、カップル専用ルームではカップル同士の相互作用による、結晶学的な状態安定化が期待できます。

    以上の4点を意識して合コンを企画することで収率はかなり改善するはずです。人肌恋しい季節ですから、90 %以上が出会えるとなれば大いに盛り上がるでしょう。結婚相談所や婚活関連のイベント関係者はぜひご検討してみてはいかがでしょうか。

    遺伝学的要因による人類滅亡は起こりえない

    2013.10.14 Monday

    3ヶ月以上前に辻元氏が「感情を捨て、冷静な議論をしよう」というタイトルで過激な記事をアゴラに投稿し、物議をかもしました。問題の段落を要約すると、人類は自然淘汰の影響を受けなくなったため遺伝的劣化が進み、いずれ滅亡を引き起こすような大問題が起こりうると主張しているのです。これは生命科学系の学科で真面目に生物学を勉強した者であればすぐわかる間違いであり、直ちにアゴラで反論記事が出るのではないかと密かに期待していました。しかしそのような記事が出ることもなく当の本人はデジタル教科書を巡る不毛な論争に奔走し、あの問題記事さえ忘れ去られようとしています。

    当人らが忘れた頃に中途半端な生物知識を持った政治家や官僚が偶然あれを読み、真に受けて暴走するようなことは絶対にあってはなりません。本稿では人類の遺伝的劣化への過剰な煽り記事に対し、現代生物学の知見を以ってして反駁することにします。

    r戦略とK戦略の混同

    辻氏はr戦略とK戦略を混同しています。彼は昆虫の生態には詳しいようですが、それはそっくりそのままヒトに当てはまるものではありません。

    昆虫は短い世代時間でたくさんの卵を産むことで著しく低い生存率をカバーするというヒトとはかけ離れた生存戦略を持っています。このような戦略は生態学の用語ではr戦略といいます。一方ヒトは世代時間が長いため昆虫のように生存率が低ければ困ります。そこでできるだけ死亡率を低くすることで種族を維持しようという戦略で進化してきました。このような戦略をK戦略といいます。

    ヒトはK戦略を極めた生物種

    ヒトの死亡率が低いのは進化の結果として単にK戦略を極めただけで、決して生物学的に異常なことではないのです。ヒトは昆虫と比較して生物としての複雑性が格段に高く、子育てに20年もの歳月を要するだけでなく老後も知恵を孫に伝承しなければなりません。一般的な哺乳類は閉経を迎えると医療の力を借りても長生きできないのに対し、ヒトがこれほどまでに長生きなのは淘汰の結果なのです。

    遺伝的劣化は際限なく進まない

    辻氏のもうひとつの誤謬は遺伝的劣化が際限なく進むと述べていることです。遺伝子の欠損が生じた個体が発生する機会は2つあり、ひとつは正常な個体から欠損が新たに生じる場合、もうひとつは欠損個体が増殖する場合です。前者は遺伝子の欠損する確率が、後者は欠損した遺伝子型の適応度が律速になります。つまり遺伝的劣化が進行するにはppmレベルの確率で発生した欠損の遺伝子型が正常な遺伝子型と競争しながら増殖する必要があるのです。

    遺伝子型の競争モデルにはゲーム理論の一種であるタカハトゲームが適用できます。タカハトゲームを簡単に説明すると、適応度の異なる二種類のプレーヤーが集団に存在した時にどちらか一方で占められてしまうのではなく、それぞれの適応度に応じた比率で個体数が平衡に達するというものです。これがそのまま当てはまると仮定すればどこかで正常型と欠損型が平衡して存在することになり、そこで欠損型の増殖は止まるのです。

    遺伝子は冗長化されている

    タカハトゲームは非常に単純なモデルであり、実際の生物ではもっと複雑な挙動をすることに注意する必要があります。ヒトは同じ機能の遺伝子を複数持っているため一つが欠損しても他でカバーし、表現型に現れてこないことが多いのです。染色体を2セット持つこともそうですし、より重要な遺伝子では数十個もスペアを用意している場合があります。詳しい説明は割愛しますが、エピジェネティクスは木村資生やジャック・モノーの時代にはあまり重要視されていなかった冗長機構です。

    r戦略とK戦略では冗長化レベルも違いますので、冗長性よりも繁殖力を重視した昆虫で遺伝的劣化が起こりやすいのは当然のことです。

    自然淘汰から性淘汰へのシフト

    そもそもヒトは本当に淘汰圧を克服し、いかなる形質を持って生まれても同じ世代時間で同じ数の子孫を同じコストで残せているでしょうか。もちろんそうなっていないのは誰の目にも明らかです。限られた環境収容力の下で少子化が起こり、未婚化や晩婚化という形で性淘汰が顕在化しています。いわば自然淘汰が性淘汰に取って代わっただけで実質的な淘汰圧はさほど変化していないのです。

    環境収容力が増大局面の時代に子をもうけた辻氏には、女性経験がないまま迎えた成人式で妻子持ちの同期に見下されたときの私の気持ちなど知る由もないのかもしれません。

    感情をおざなりにしてはいけない

    あの問題記事はテーマとして感情を捨てることの重要性を訴えていますが、感情も進化が生み出したサバイバルツールであることを忘れてはなりません。人為淘汰の話に生理的不快感を催すこと自体、それが生物学的にも正しくないことを暗に裏付けていると言えます。

    余談ですが辻氏が尋ねたときに「タブーだ」とお茶を濁しただけではっきり否定しなかった生物学者にも問題があります。

    最善とは「成し遂げられる」もの

    遺伝的劣化は平衡に達したところで止まると述べましたが、そのタイムスケールは文明の歴史を優に超えます。おそらくその遥か以前に成長の限界を迎えて人為淘汰をするまでもなく自然淘汰が優位になり、滅亡に遠く及ばず持続可能な人口に落ち着いたところで均衡します。辻氏の提言する策を講じたところで成長の限界による諸問題は不可避であり、不必要な犠牲を増やすだけです。

    財政危機も気候変動も既に人類には手の打ちようがないレベルに達しており、もはやコストを掛けて下手に手を打とうとするよりも、流れに身を任せて神の見えざる手と進化の過程で培われたロバスト性に全てを委ねるしか道はないように思われます。いずれXデーはやってくるわけですから、せめて今だけでも楽しく過ごしたほうが得策です。

    来たる混乱時には下手に手を打った者に全責任が押し付けられて処刑され、やがて落ち着いた時には「私が混乱を鎮めた」と宣う者が出てくることは容易に予想できます。混乱も沈静化も遺伝子の挙動も自然に起こる物理現象であり、それを人類が思い通りに操れると勘違いすることは驕りでしかありません。哲学的な表現になりますが、最善とは「成し遂げる」ものではなく受動的に「成し遂げられる」ものではないでしょうか。

    どうなる、再生できない「ヘリウム」の需給

    2013.10.01 Tuesday

    夢の国東京ディズニーランドでは2012年11月から風船の販売が中止になっています。直接の原因は米国のヘリウム製造プラントでトラブルが発生し、風船を浮かせるためのヘリウムが調達困難になったためです。ディズニーランドの風船に限って言えば近々復活すると思われますが、長期的に見ると決して楽観視できず再び中止に追い込まれる可能性が濃厚です。本稿では、今後数十年で世界のヘリウム需給がどうなるかを予測してみることにします。

    様々な用途に用いられるヘリウム

    ヘリウムは吸うと声が変わるガスとして、または風船を浮かせるガスとしてお馴染みの気体物質です。化学的には希ガスと呼ばれるグループに分類されていて他の物質と反応しないことが大きな特徴で、しかもその中で最も沸点や粘度が低いという特異な性質を持ちます。それらの特徴を生かしてMRIや半導体、光ファイバー製造の冷却材として用いられており、この用途を他のガスで代替することはほぼ不可能です。

    北米・中東への偏在

    資源としてのヘリウムは北米や中東のごく限られたガス田から天然ガスに混ざって産出し、話題のシェールガスにはほとんど含まれていません。空気中には5ppm存在しますが、現在のところそれを経済的に取り出して利用する技術は確立されておらず、したがって再生不能な枯渇性資源であると言えます。

    米国は1960年代の冷戦期に軍事用の気球を浮かせるための戦略物資として大量に備蓄し、冷戦が終わった1990年代に備蓄の放出を開始しました。そのため2000年には米国が世界で使われるうちの80%を供給するようになり、やや減産した2013年現在でも76%、実に4分の3の供給を担っています。そして残りはほとんどが地政学的リスクの高い中東です。

    逼迫する需給

    幸いにも我が国においては岩谷産業株式会社がカタールからの輸入を開始したため当面は産業用や医療用のヘリウムが不足する心配はなくなりました。ディズニーランドの風船も近いうちに再開されると考えられます。とはいえ、再生不能な資源である以上は今後再び不足することは避けられません。

    世界のヘリウム供給力は年間1億7000万m3、需要もそれに近いほどあり、需給は非常にタイトな状況です。そのような事情があるためアメリカの施設がひとつ故障しただけで深刻なヘリウム不足に陥ったと言えます。その上世界のヘリウム需要は新興国を中心に右肩上がりで、今後もこの傾向が続くと考えられます。

    やがてピークがやってくる

    アゴラでは辻元さんが盛んにピークオイルに関する議論をされていますが、ヘリウムが在来型天然ガスの随伴物質である以上はどこかでピークがやってくる、あるいはやってきたはずです。近年のシェールガスブームを見る限り、どうも在来型天然ガスは既にピークを迎えているような気がしてなりません。ところが前述のとおり生産の大半を担う米国に大量の備蓄があり、備蓄放出がピークを隠蔽した可能性は否定できません。そうだとすれば備蓄が底をつくであろう2015年頃に見かけ上の供給ピークがやってくることになります。この予測は可採年数R/Pが残り25年と言われていることを考えると妥当なように思えます。

    成長の限界との関係

    1972年、ローマ・クラブは「成長の限界」というレポートを発表しました。これは環境の劣化や資源の減耗により経済が破綻し、やがて文明の衰退が始まるというものです。ヘリウムも例外ではなく、減耗していずれ枯渇することが運命づけられています。しかしヘリウムは生体の必須元素ではないため、なくなっても人類が滅ぶことはありません。せいぜいMRIがなくなって寿命が少し縮んだり、現代文明の象徴であるインターネットやリニア新幹線がダメになったりする程度です。むしろ成長の限界による経済破綻と人口減少がヘリウム資源の寿命を延ばすことも予想されます。

    原子力への期待

    2040年以降には原子力技術がヘリウムの新たな供給源となる可能性があります。ヘリウムの原子核はウランやトリウムが鉛に崩壊する過程で発生するアルファ粒子で、天然ガスに含まれるヘリウムも地球内部での放射壊変によって生成したものです。アルファ粒子はとても安定しているため核融合や核分裂、核破砕など様々な核反応で普遍的に生成します。そして特異な性質のため分離精製が容易で、放射能を持つ同位体が存在しないためそのまま使えます。問題は反応で出入りするエネルギーに対して得られるヘリウムの量が極度に少ないことです。核融合が実用化されるならまだしも、リチウムと中性子の反応や吸熱反応である核破砕で生成できる量は限られています。

    他には大気から取り出す方法がありますが、仮に技術開発が進んだとしても多大なエネルギーが必要です。それを自然エネルギーで手当するのはコスト面でかなり厳しいと考えられるため、やはり中長期的視点において原子力とヘリウムは切っても切れなさそうです。

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